ゲイリー助川エッセイ集

気まぐれにエッセイを書き綴ります♪

あいうえおエッセイ 「お」―男と女♪

 もう10年以上前だと思うが「話を聞かない男 地図の読めない女」という本が話題になった。

僕もなかなか気になるタイトルだったので本屋さんを訪れるたびにいつか読もうなんて思っていたけど、今だに読んでいない。

大体本屋さんに行くときは「本命」でほしい本が何冊かあるときで、どうしても後回しになってしまう。そうなるといつの日かこの本の存在すら忘れてしまっているのだ。「いつかいつか買う」詐欺をはたらいているみたいで著者には申し訳ない気分である。

 さて、今だに読んでいない本ではあるので、内容についてはわからないが、タイトルだけを見て考えてみると「話を聞かない男」というのは僕に限ってはすっぽりそのまま当てはまる。ただ、「地図を読めない女」というのもある意味当てはまるところがあって、それはそれで複雑な気分だ。

 男というのは女性と違って、同時に同じことができない脳らしい。なので男が何かひとつのことに熱中しているところに話かけると大概が聞いていないということになる。でもこれが仕事になるとさすがに聞いていないでは済まなくなるわけで、これはやはり自分を護ろうとする本能がニョキッと瞬間的に顔を出すんだろう。そう考えると、「誰が」話しかけたかというところや、その場がどのようなシチュエーションであるかが重要になってくる。上司に話しかけられるのと家人に話しかけられるとでは違うのと同時に、緊張感のある場面と家でくつろいでいる時とでも全く違ってくるのではないだろうか。

「旦那が全然私の話を聞いてくれない」

という奥様方は旦那は何も無視しようとして聞いていないのではなくて、まずは男はそういう生き物だと思ってもらったほうがいい。

「上司の話ならちゃんと聞くのに私の話は聞かないのはおかしい」

そう思うのも無理はないが、この場合、奥様であるアナタに心を許しているか、アナタのことを下にみて舐めてみているか、さっぱり関心がないかだ。このどれかを聞いてみると、たいていは「心を許している」と答えるだろう。それもそのはずで、その他の回答をしたら翌日あたり緑色の紙を突きつけられるに違いない。

 ただ考えてみると、奥様の話を100%聞いているという旦那というのもある意味凄い。余程奥様に関心があるか、奥様が恐妻家かどちらかだ。

「うちの旦那は他の旦那と違ってちゃんと話を聞いてくれる」

と自慢する奥様はちょっと気をつけたほうがいい。アナタが怖くて旦那が耳を傾けている可能性があるのだ。

 僕はもう結婚して14年になるが、全然話を聞いていないので、叱られることが多い。「うん、うん」などと適当に頷いていると

「あ、話聞いていないな。今何言った?」

14年の結婚生活でおそらく100回は聞かれていることだろう。数えてはいないが4勝96敗くらいだと思う。