ゲイリー助川エッセイ集

気まぐれにエッセイを書き綴ります♪

もし今、新郎の苗字が渡部さんで、新婦の苗字が佐々木さんというカップルから結婚披露宴の招待状が届いたら

 今は新型コロナの影響で、結婚式は延期にされたり中止になったりと、結婚される方々にはこれから訪れる幸せの絶頂に水を差された感じだ。一生に一回かもしれないし、二回かもしれないし、三度目の正直かもしれない貴重な式だけにコロナが収束した暁にはなんとか執り行ってもらいたいと思う。

 ところで、結婚式というと事前に招待状が送られてくるわけで、出欠のハガキと催される会場の他にざっと新郎新婦の名前くらいは眺めるものだ。

ことに新婦側での出席となると苗字が誰々になるのかぁくらいは考えたりするものだと思う。

 さて、ここでもし、この度めでたく結婚することになった新郎の苗字が渡部さんで、新婦の苗字が佐々木さんという二人から結婚披露宴の招待状が届いたらと考えると、それはそれは頭の中も賑やかになるに違いない。新郎新婦のどちらも知っている方ならともかく、片方しか知らない方にとっては昨今の報道も相まって、先入観はしっかりと形成されているので、想像力という熱気球を存分に膨らませることができるはずだ。特に新婦側の関係者としては親戚ではなく、友人や同僚といった一定の距離がある方々には最高の酒の肴になるネタといえる。

 例えば、新郎を知らない新婦側の友人同士のグループLINEがあった場合はこんな感じになるのではないだろうか。超自分的視点にはなってしまうが見ていただきたい。

「N子(旧姓佐々木)から案内きた?」

「来た来た。相手の苗字渡部やん」

「そうそう、大丈夫かなぁ、この二人」

「あの渡部と佐々木ではないけど、そう思ってしまうよね」

「どうする?新郎のお父さんの名前が『文春』やったら」

「ふみはる??ふみはるならありえそう(笑)いや、それならN子のお父さんが文春のほうが面白くない?(笑)」

「お父さんがそうでなくても弟とかが文春とかなら面白いのに」

「ほんで、誰か新潮て名前の人が大騒ぎになるな」

「そんな名前おらんやろ」

「桂新潮とか」

「落語家か!」

「そうそう、それはいいとして、この二人って同じ会社みたいやで」

「オフィス・ラブか(^o^)」

「オフィス・ラブならいけど・・・トイレラブやったら嫌やな」

「www」

「3分の恋が積み重なって・・・みたいな」

「3分やで!カップヌードルか!」

「キューピーのクッキングか!」

「ボクシングの1ラウンドか!」

「聞いた話、ウルトラマンも活躍できるのが3分みたい」

「3分てさあ、スキマ時間やん。スキマ時間にトイレで心のスキマ埋められたら喪黒福造の出番がなくなるっちゅうねん」

「ほんまは本人が『ドーーーン』てしてもらわなアカンのに『ドーーーン』の前に『コト』が終わってしまってるもん。だから『ドーーーン』されへん」

「wwwウケる」

「いや、まあでもほんまに相手どんな人なんやろな」

「N子面食いやからカッコいいんちゃう」

「相手がっつり複数と不倫するかもしれんで」

「『歩く濃厚接触』みたいな男かも(笑)」

「新郎の紹介てどんなんやろ。高校時代は野球部で趣味はおいしい店巡りみたいな」

「野球部はそのままでも趣味はさすがにそれにしたらまんまやし、変えてくるんちゃう?」

「トイレ掃除とか」

「せやからトイレはアカンてwww」

「友人挨拶がさ、大嶋さんとか中島さんとかにしてほしいな。児島さんていたらサイコーやけど」

「それでは新郎のご友人であられます、児島様より・・・」

「間違えろよ!みたいなwww」

「渡部君は歩く濃厚接触と言われてまして・・」

「渡部君の新居はオフィスから徒歩3分のところです」

「渡部君はスポーツマンで1キロを3分で走ります」

「より詳しい新郎を知りたければ『ネットを見ろ』とか」

「それ攻めすぎやな」

「二次会のビンゴとかでさ、渡部君の3分間クッキング〜〜」

「今日トイレで料理される女の子は・・・」

「wwwだからそれアカンて」

「私が指名されたらどうしよ・・」

というように紙面の関係上、このあたりで止めておこうと思うが考えれば他にもゴロゴロと話は湧いて出てくることだろう。本番の式が始まるまで脳みそパンパンの想像力で支配されるに違いない。

 さて、今度は新郎側であるが、こちらは非常にシンプルであって、焦点は新婦が美人かどうかだ。あとは場の雰囲気的に渡部君をいじり倒せるかどうかといったところだろう。「本物」の佐々木さんが最上級の美人である以上は、ほぼ誰が来ても見劣りしてしまうに違いない。なので後ろにズテーンとひっくり返る心づもりでいる必要があるかもしれないが、どの程度の美人であるかは見てしまうものだ。新婦も基準が「本物」と比較されてしまうのでこれは気の毒な話だと思う。

 ただ、僕は新婦には言い方は悪いが「普通」の人であるほうが良い気がする。本物とはいかないまでも美人であった場合はやはり本家本元に似た関係性を思い浮かべてしまいそうだ。つまりは報道のような様相である。なので波風を立てないという点では「普通」が素晴らしい。

 先入観というのはあるよりないほうがいい。中には楽しめるものもあるが、あることによって思考がマイナスに傾くことがある。今回の渡部さんも本当に不倫してしまった際は

「ほらぁ、やっぱり渡部って名前の人って・・・」

と考える人もいるだろう。

こうなると本物とは正反対の真面目一徹渡部さんだったら可愛そうな話だ。

このように先入観で嫌な思いをされた渡部さんには是非とも喪黒福造に心のスキマを埋めてもらいたいものだ。

「私がアナタの心のスキマをお埋めいたしましょう。た・だ・し、多目的トイレは絶対使ってはいけませんからね。ホーッホッホッホー」

全国の渡部さんには頑張ってほしいところだ。