ゲイリー助川エッセイ集

気まぐれにエッセイを書き綴ります♪

読書感想文という壁

 これを書いているのが8月29日ということで、30数年前の今頃は夏休みの宿題が終わらないかもしれないとヒイヒイ言ってるところだ。


 とりわけ最大の壁は読書感想文であって、たかだか原稿用紙5枚ほどを書くのに1週間はかかった。
そもそも読書感想文は必要なのかを考えたときに、これはちゃんと本を読んだことを証明する証明書の役割なんだと思う。長い夏休みの中で本の一冊でも読まんかぇという教育委員会の圧力なんだろう、本を読んだことを証明してくださいというわけだ。僕たちは只々その証明書を作成させられていたわけである。


 それにしても小学生の僕は感想文を書くのがどうにも苦手で、幕内弁当の椎茸の煮物を丸のみするくらいの嫌悪感すら感じた。ただ感想文というのが何なのかを全く理解していなかったというのもある。


「感想を書け」というのは親も教師も口を揃えて言うものの、感想なんて正直「面白かった」「かわいそうだった」など、一行で終わってしまう。あと4枚以上何を書いていいのかわからない。面白い以外の感想なんてないわけで、仕方なしに本の内容を書いて何とかマスを埋めていくことになる。「終わった」と喜ぶのも束の間、「これはあらすじや。感想じゃない」と親から指摘が入る。こうなったら八方塞がりで、感想を書いたら一行、マスを埋めたらあらすじになるわけだ。
「感想文てどう書いたらいいかわからん」
「感想書いたらええねん」
このやりとりが続いて、結局痺れを切らした母親がサクっと書き上げてくれて終わった。


 こんなことだから読書感想文に対していい印象なんてあるはずもなく、例えば一緒に映画を観に行った相手が原稿用紙5枚分の感想の述べるような輩だったら、そんな奴とは絶対に映画なんて観に行かないとか、訳のわからない屁理屈を言ったりする。こういった映画などの感想はスパっと一行で述べてほしいものだ。僕の友人はある時、気になる女性を誘って映画を観に行ったが、映画が始まるなり船を漕ぎだしたそうだ。「映画どやった?面白かったな」と聞くと「う、うん。。。」と返ってきて、一行での感想がいいといってもこれはこれで困る話だ。


感想というのは、おそらく本当に感動すれば、なかなか言葉で表せないものだと思う。言葉にできない「。。。。」が本当の感想なんだろう。
30年以上経った今もまだ読書感想文があるようだが、小学生諸君には是非とも「。。。。」と書いた奇抜な感想文を提出してみてほしい。