ゲイリー助川エッセイ集

気まぐれにエッセイを書き綴ります♪

肛門科入門

 頑張ってエッセイを書くと宣言しておきながら、いきなりこのタイトルで先行きが危ぶまれる。

 先日、ついに肛門科デビューを果たしてしまった。この決断に至るまでかなり長い時間がかかっていて、おそらく小学1年生だった人が中学3年生になるくらいかかっている。

 まずこの「肛門科」という全くオブラートに包み込まれていない響きがどうしても足にブレーキをかけさせてしまうのだ。もう「むき出し」である。これ以上でもこれ以下でもなく肛門は肛門なのであって、この限定的なところに引き目を感じるのだ。限定的というと耳鼻科も眼科も皮膚科も限定的じゃないかと思うかもしれないがそれは違う。

 例えばTSUTAYAで例えると、耳鼻科、眼科、皮膚科はいわゆるプロレスコーナー、F1コーナー、洋画コーナーといったような正統派の分類にあたると考えて、肛門科はというと「18禁」と書かれた暖簾を潜るようなものだ。「周りの視線」というものを光線のように浴びながら肛門科の暖簾を潜らなくてはいけない。

 そしてもうひとつ、肛門科への足を止めるものに「想像される診察風景」だろう。歯医者に行くのを嫌がる人はたくさんいて、あの「キーン」という機械音が痛みを想像させて嫌というパターンが多いと聞く。それと同じく、僕は肛門科と聞くと分娩室さながらの高台の上に乗って両足をひっかけてお医者さんに御開帳するというスタイルを考えてしまうのだ。そう考えると「痛み<羞恥心」という図式になってしまう。

 ともあれ、今回はそんな羞恥心をも凌ぐ激痛に襲われ、肛門科の暖簾を潜ってしまった。行ってしまうとあっさりしたものだったが、やはりそれでも肛門科という響きはなかなか馴染めない。「シークレット・ゲート」みたいな名前にしてほしいと思う。